色つやは月日を経るごとに増し、いつか、土へと還っていく。 木の床はこれから光沢を増してもっとも美しい姿になるのは何十年も先という。梁材に現れた文様も、 木の呼吸に合わせて少しずつ変わる。 自然から生まれた家は、刻々と変化する味わいで住む人を長く楽しませ、やがて役割を終えれば、また 大きな自然に還っていく。 足元にどっしりと石を据え、なまこ壁と本焼き板を取り回した、風格漂う住まい。 柔らかい木肌の風合いが広がる、穏やかで心地よい空間。濃い色のカウンター天板は、南洋桑という木を用いている。収納の戸は「縦舞良(たてまいら)」といって、横張りの板を縦の桟で押さえ、表に出ないよう裏から釘を打つ、手の込んだもの。キッチンは梁の出た勾配天井、ダイニングは対比してすっきりと仕上げられ、全体の調和のとれたデザインとなっている。 障子越しの光を受けて、青畳が清々しく香る。窓下にもうけた地袋の天板は、柾目の整った「肥え松」。脂(ヤニ)分を多く含み、年月が経つほどに飴のような色艶を出すという銘木。手づくりの姿勢は、窓サッシにまで徹底。 スギやクリ、ケヤキ、サクラなどさまざまな木が用いられ、天井や床の組み方もいろいろで、家全体が素材と伝統技術を最大限に活かした家。